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スチールパン(スチールドラム)の特徴と演奏法【楽器辞典69】

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スチールパン(スチールドラム)の特徴と演奏法 楽器辞典
スチールパン(スチールドラム)の特徴と演奏法
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スチールパン(スチールドラム)の特徴と演奏法【楽器辞典69】

今回は、スチールパン(スチールドラム)の特徴と演奏法についてわかりやすく解説していきます。

スチールパンは、トリニダード・トバゴで生まれた打楽器で、ドラム缶を加工して音階を作り出した楽器です。その音色は透明感があり、南国の風を感じさせるような独特の響きを持っています。

ソロ演奏から大規模なアンサンブルまで幅広く使用され、特にカーニバルやスティールパンのコンテスト「パノラマ」で重要な役割を果たします。

スチールパンは「20世紀最後のアコースティック楽器」とも称され、さまざまな音楽ジャンルに取り入れられています。

関連記事:ティンパニの特徴と演奏法【楽器辞典68】

スチールパンの音色の特徴

スチールパン(スティールドラム)は、カリブ海のトリニダード・トバゴで生まれた打楽器で、その音色にはいくつかの特徴があります。

倍音の響き: スチールパンは独特の倍音を持ち、非常にクリアで透き通った音を出します。これはドラム缶の底面を凹ませて音階を作ることで実現され、叩く位置によって異なる音が生まれます。
透明感と繊細さ: 音色は南国をイメージさせるような透明で繊細なもので、カリブの風を感じさせるような爽やかさがあります。このため、スチールパンは癒しの音とも称されることがあります。
豊かな音域: スチールパンにはさまざまな種類があり、それぞれ異なる音域を持っています。テナーパンは高い音域を担当し、ロー・テナーパンはより深い響きを持つため、アンサンブルにおいて重要な役割を果たします。
迫力ある演奏: 大人数で演奏した際には、その迫力が際立ち、観客に強い印象を与えます。特にカーニバルなどのイベントでは、多くのスチールパンが一体となって演奏され、その音の洪水に圧倒されることもあります。
スチールパンはそのユニークな構造と調律方法から、手作業で丁寧に作られるため、各楽器ごとに個性的な音色が楽しめます。

これらの特徴により、スチールパンは多様な音楽ジャンルで使用され、特にカリブ音楽やポピュラー音楽において重要な役割を果たしています。

楽曲での役割

スチールパンは、音楽の中で多様な役割を果たす重要な楽器です。以下にその主な役割を示します。

メロディ担当

テナー・パンはスチールパンの中で最も高い音域を持ち、主にメロディを担当します。

バンドの中心的な旋律を奏でることで、楽曲に明るさと活気をもたらします。

伴奏

ダブル・セコンドやダブル・ギター・パンは、和音やリズムを提供する伴奏楽器として機能します。

これにより、メロディを支えつつ、全体のハーモニーを豊かにします。

リズムの基盤

スチールパンはリズムセクションとしても重要で、ビートを刻むことで曲全体のテンポを支えます。

特に小編成ではベースラインを担当し、ダンスミュージックにおいては不可欠な要素となります。

アンサンブルの一体感

スチールバンドでは、複数のスチールパンが組み合わさってアンサンブルを形成します。

これにより、力強いパフォーマンスが生まれ、観客に強い印象を与えます。

ソロ演奏

スチールパンはソロ楽器としても活躍でき、その美しい音色で聴衆を魅了します。

特にダブル・セコンドやチェロ・パンなどは、深い響きで独自のメロディやカウンターメロディを奏でることができます。

文化的表現

スチールパンはカリブ海の文化を反映した楽器であり、その音楽は地域の伝統や祭り(例えばカーニバル)と密接に関連しています。

このため、スチールパンの演奏は文化的なアイデンティティの表現にも寄与しています。

これらの役割から、スチールパンは多様な音楽ジャンルで使用され、特にカリブ音楽やポピュラー音楽において重要な存在となっています。

スチールパンの演奏テクニック

スチールパンの演奏法は、その特異な構造と音色を活かすために独自のテクニックが求められます。以下に主な演奏法を示します。

1. マレットの持ち方
持ち方: マレットは人差し指と親指でつまむように持ちます。
握りすぎないように注意し、力を抜いて自然な姿勢で持つことが重要です。
2. 叩き方
弾くイメージ: スチールパンは「叩く」のではなく「弾く」楽器です。
腕をリラックスさせ、肘を支点にして手首を柔らかく動かして叩きます。
これにより、音の反発力を活かした美しい音色が生まれます。
力加減: 打面に対する力加減が重要で、強く叩きすぎると音が割れてしまいます。
軽やかに、まるで縄跳びを回すような感覚でマレットを動かします。
3. 音の出し方
音のイメージ: スチールパンは非常に繊細な楽器なので、音を「鳴らす」ことが最も重要です。
各音域の違いを理解し、高音と低音で異なるアプローチが必要です。
4. 練習方法
スケール練習: 音階の練習は、各音を均等に鳴らすために重要です。これによってフレーズ練習が効率的になり、曲の演奏もスムーズになります。
体の使い方: 演奏中は体に力を入れず、自然体で楽器に向き合うことが大切です。
特にスチールパンの角度や配置に慣れるまで、無理な姿勢は避けるべきです。
5. 表現力
感情を込める: 演奏時には、自分自身の感情や表現を込めることが重要です。
曲のフレーズやリズムに対して、自分なりの間や表情を持たせることで、より魅力的な演奏になります。

これらのテクニックを駆使することで、スチールパン特有の美しい音色とリズム感を生かした演奏が可能になります。

初心者でも徐々に慣れていくことで、自分だけのスタイルを見つけることができるでしょう。

スチールパンの歴史

スチールパンの歴史は、カリブ海のトリニダード・トバゴに深く根ざしています。

この楽器は、20世紀の最後に発明された最大のアコースティック楽器とされ、その独特な音色と文化的背景が特徴です。

スチールパンの起源
19世紀の制約: 19世紀半ば、トリニダード・トバゴでは黒人奴隷たちが太鼓を使用することを禁止されました。
彼らは代わりに竹の棒を使った「タンブーバンブー」を叩いて音を出していましたが、1937年にはこれも禁止されました。
ドラム缶の発見: 禁止された楽器の代替として、彼らは身近にあった鉄くずやドラム缶に目を向けました。
1939年、ウインストン・スプリー・サイモンがドラムを修理している際に、叩く位置によって異なる音が出ることに気づき、スチールパンの原型が誕生しました。
発展と普及
楽器としての進化: その後、エリー・マネットやネヴィル・ジュレスなどの音楽家たちがスチールパンを改良し、音階を持つ楽器として発展させていきました。
1950年代から1960年代には、多くのスティールバンドが北米やヨーロッパでツアーを行い、世界的な注目を集めるようになりました。
文化的な意義: スチールパンはトリニダード・トバゴのカーニバルに欠かせない存在であり、「パノラマ」と呼ばれるスティールパンコンテストは毎年盛大に行われています。
1992年にはトリニダード・トバゴ政府によって「国民楽器」として正式に認められました。
グローバルな影響
音楽ジャンルへの統合: スチールパンはジャズやポピュラー音楽にも取り入れられ、ジョン・レノンやビル・ウィザーズなど著名なアーティストによる楽曲にも使用されています。
これにより、スチールパンは国際的な舞台でも知られる楽器となりました。

このように、スチールパンは歴史的背景と文化的意義を持ちながら進化し続けており、今では多様な音楽シーンで重要な役割を果たしています。

スチールパンで有名なアーティスト

スチールパンで有名なアーティストやバンドは、スティールパンの独特な音色を活かした楽曲を数多く制作しています。以下に代表的なアーティストを紹介します。

アンディ・ナレル: スチールパンの名手であり、ジャズやワールドミュージックの分野で活躍しています。
彼の作品は、スチールパンをソロ楽器として引き立てるものが多く、国際的に評価されています。
パノラマ・スティール・オーケストラ: トリニダード・トバゴ発祥のスティールパンオーケストラで、1998年に結成されました。
日本におけるスティールパンの先駆者として知られ、国際大会でも高い評価を得ています。
小林うてな: マルチミュージシャンとして知られ、都会的でありながら土俗的なサウンドを持つスチールパンの演奏で注目されています。
彼女は独学でスチールパンを習得し、独自のスタイルを確立しています。

これらのアーティストや楽曲は、スチールパンの魅力を広く伝え、多様な音楽ジャンルへの融合を促進しています。

スチールパンを使った名曲

スチールパンを使った名曲はいくつかあり、その独特な音色が多様な音楽ジャンルで活用されています。以下に代表的な楽曲を紹介します。

  • Just the Two of Us – Grover Washington Jr.
    この1980年の楽曲では、スチールパンが間奏部分で使用され、都会的で洗練された雰囲気を醸し出しています。
  • Beautiful Boy – John Lennon
    ジョン・レノンが愛息に宛てた歌で、トロピカルな曲調にスチールパンの音色がマッチしています。
  • Waiting On You – The Pointer Sisters
    ディスコブギーなソウルナンバーで、スチールパンがイントロや中間部で活躍し、楽曲に明るさを加えています。
  • Come Over ft. Stylo G – Clean Bandit
    エレクトロとクラシックの要素を融合させたダンスミュージックで、アフロビート風のリズムにスチールパンが使われています。
  • No Sun – KID FRESINO
    若手ラッパーKID FRESINOの楽曲で、スチールパンの音色が都会的かつ土俗的なサウンドを演出しています。
  • Sakésho
    アンディ・ナレルが参加するフレンチ・カリビアンのジャズプロジェクトで、スチールパンの音色が心地よい雰囲気を生み出しています。
  • Panorama
    トリニダード・トバゴのカーニバルで行われるスティールパンオーケストラのコンテストで、多くのオーケストラが参加し、圧巻のパフォーマンスを披露します。

これらの楽曲は、スチールパンの多様性とその魅力を示しており、さまざまな音楽スタイルにおいて重要な役割を果たしています。

スチールパンの種類

スチールパンには、音域や役割に応じてさまざまな種類があります。以下に主なスチールパンの種類を紹介します。

テナー・パン(Tenor Pan)
最も高い音域を持ち、主にメロディーを担当する代表的なモデルです。音域は2オクターブ以上あり、バンドの中心的な役割を果たします。
ダブル・テナー・パン(Double Tenor)
テナー・パンの音域を広げたもので、2個で1セットになっています。クリアで力強い音が特徴です。
ダブル・セコンド・パン(Double Second)
ダブル・テナーと似た音域ですが、異なる音の配列により柔らかく深い響きが得られます。主に伴奏として使われますが、ソロでも活躍します。
ダブル・ギター・パン(Double Guitar)
ギターのようにコードを弾く伴奏楽器で、2個1セットです。中低域の豊かな響きが特徴です。
チェロ・パン(Cello Pan)
オーケストラで言うチェロと同様の役割を持ち、3個または4個で構成されます。深い響きでバンドを支える役割を果たします。
テナー・ベース・パン(Tenor Bass)
4個1セットでベースラインを担当し、小編成でも十分なベースの役割を果たします。
シックス・ベース・パン(Six Bass)
スタンダードなモデルで、6個1セットから成り立っています。低音域を担当し、演奏時は奏者の周りを囲むように配置されます。
ナイン・ベース(Nine Bass)
より低い音域を持つモデルで、9個の音盤から構成されています。

これらのスチールパンは、それぞれ異なる音色と役割を持ち、オーケストラやバンドでの演奏において重要な存在となっています。

スチールパンの有名なメーカー

スチールパンのメーカーは、世界中でさまざまなブランドが存在し、それぞれ独自の特徴を持っています。以下に代表的なスチールパンメーカーを紹介します。

PANLAND TRINIDAD & TOBAGO LIMITED
トリニダード・トバゴに本拠を置くメーカーで、スチールパンの量産を始めた唯一のメーカーです。環境に優しいパウダーコーティング仕様を開発し、普及価格帯の楽器も提供しています。
SIGNALHILL
アメリカ西海岸にあるスティールパン専門ショップと提携して設立されたブランドで、トリニダード・トバゴ製のベーシックモデルをアメリカのチューナーが調整したモデルを提供しています。
STICK & STEEL
トリニダード・トバゴの名門スティールバンド「レネゲイズ」の元テナープレーヤー、マリオ・ジョセフ氏が立ち上げたブランドです。製造からチューニングまで全工程を監修し、高品質な楽器を目指しています。
生田スティールパン(Ikuta Steelpan)
日本のメーカーで、細かなオーダーが可能で、プロからアマチュアまで幅広く利用されています。特に音色やチューニングにこだわり、個別対応が特徴です。
Smarty Pans Music
カリフォルニアにある工房で、世界最高水準のスティールパンを製作しています。日本でも高品質な楽器を直販しています。

これらのメーカーは、それぞれ異なる技術やデザイン哲学を持ち、スチールパンの多様性と音色の豊かさを提供しています。

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