チルウェーブの特徴と歴史【音楽ジャンル辞典66】

チルウェーブの特徴と歴史 楽曲・ジャンル辞典
チルウェーブの特徴と歴史
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チルウェーブの特徴と歴史【音楽ジャンル辞典66】

今回は、チルウェーブについての音楽的特徴や歴史をわかりやすく解説します。

チルウェーブは2000年代後半に登場した電子音楽ジャンルで、ノスタルジックで夢のような雰囲気が特徴です。暖かみのあるシンセサイザーサウンド、ローファイな質感、80年代ポップスの影響を受けたメロディ、そしてリラックスした”チル”な雰囲気を持ちます。エフェクトを多用したボーカルと、ミッドテンポのビートが特徴的で、夏や海、青春の思い出を連想させる音楽性を持っています。

前回:アイリッシュミュージックの特徴と歴史【音楽ジャンル辞典65】

チルウェイヴ (英: Chillwave)は、音楽のジャンルの一つであり、グローファイ (英: Glo-fi)とも称される。「Chill」は「落ち着く、のんびりする」などを意味する英語のスラングである。

Wikipedia「チルウェイブ」より引用

チルウェーブの音楽的特徴

チルウェーブ(Chillwave)は2000年代後半から2010年代初頭にかけて人気を集めた音楽ジャンルで、以下のような音楽的特徴を持っています。

サウンド

暖かみのあるシンセサイザーサウンド
ローファイな質感と霞がかったような音響効果
リバーブやディレイなどのエフェクトを多用

リズム

ミッドテンポのビート
ドラムマシンやサンプリングを使用したリズムパターン

メロディ

懐かしさを感じさせるメロディライン
80年代のポップミュージックやシンセポップからの影響

ボーカル

エフェクトを多用した、こもったようなボーカル処理
歌詞は個人的で内省的な内容が多い

全体的な雰囲気

ノスタルジックで夢のような雰囲気
夏や海、青春の思い出を連想させる
リラックスした、まさに”チル”な気分を醸成する

制作手法

ベッドルームやホームスタジオでの自主制作が多い
ローファイな録音技術とハイファイなプロダクションの融合

チルウェーブは、デジタル技術とアナログ的な温かみを巧みに融合させ、現代的でありながらノスタルジックな音楽性を特徴としています。このジャンルは、Washed Out、Toro y Moi、Neon Indianなどのアーティストによって代表されています。

チルウェーブで使われている楽器

チルウェーブで使用される楽器には、特徴的な選択と使用法があります。以下に主な楽器とその特徴を説明します。

シンセサイザー
アナログシンセやヴィンテージシンセの温かみのある音色を多用
80年代のシンセポップを彷彿とさせるサウンド
パッドやアルペジオなど、空間的な広がりを持つ音色が特徴的
サンプラー
古いレコードやカセットテープからのサンプリングを活用
ノスタルジックな雰囲気を醸成するために使用
ドラムマシン
ヴィンテージのドラムマシン(例:Roland TR-808)を好んで使用
ローファイなビートやリズムパターンを生成
ギター
エフェクターを多用し、霞がかったサウンドを作り出す
リバーブやディレイを効果的に使用
キーボード
電子ピアノやエレクトリックピアノの音色を活用
柔らかく、メロディアスな要素を加える
ボーカルプロセッシング
ボーカルにリバーブやディレイを多用
ピッチシフトやボコーダーなどのエフェクトを使用し、独特の音色を作り出す
フィールドレコーディング
自然音や環境音を取り入れ、雰囲気を醸成
波の音や風の音など、夏や海を連想させる音を使用
ソフトウェア楽器
DAW(Digital Audio Workstation)上で動作するプラグインを多用
ヴィンテージシンセの音色を再現するソフトシンセを活用

これらの楽器やサウンドソースは、デジタルとアナログの融合、ノスタルジーと現代性の調和を目指して選択され、使用されます。チルウェーブアーティストは、これらの要素を巧みに組み合わせることで、独特の夢のような音響空間を創り出しています。

楽曲アレンジに取り入れるコツ

チルウェーブの要素を楽曲に取り入れる際のポイントは以下の通りです。

サウンドデザイン
暖かみのあるアナログシンセサウンドを使用
リバーブやディレイを多用して空間的な広がりを作る
ローファイな質感を意識し、適度なノイズや歪みを加える
リズム構成
ミッドテンポのビートを基本とする(約100-120 BPM)
ドラムマシンやサンプリングを活用し、緩やかなグルーヴを作る
4つ打ちを基調としつつ、微妙なズレや揺らぎを加える
メロディ作り
80年代ポップスやシンセポップを参考にしたキャッチーなメロディ
アルペジオやパッドサウンドを効果的に使用
シンプルで覚えやすいフレーズを心がける
ボーカル処理
エフェクトを多用し、こもった感じや遠くから聞こえるような印象を与える
ピッチシフトやボコーダーを使用して独特の音色を作り出す
歌詞は個人的で内省的な内容を心がける
全体的な雰囲気づくり
ノスタルジックで夢のような雰囲気を意識する
夏や海、青春の思い出を連想させる要素を取り入れる
リラックスした、”チル”な気分を醸成する
プロダクション技術
ベッドルームやホームスタジオでの制作を意識したローファイな質感
アナログとデジタルの融合を目指す
適度な音圧と広がりのあるミックスを心がける
サンプリングの活用
古いレコードやカセットテープからのサンプルを効果的に使用
環境音や自然音を取り入れて雰囲気を醸成
楽器の選択
ヴィンテージシンセやドラムマシンの音色を活用
ギターにはエフェクターを多用し、霞がかったサウンドを作る
構成
緩やかな展開を心がけ、急激な変化を避ける
イントロやアウトロを長めに設定し、余韻を大切にする〈参考アーティスト〉
Washed Out、Toro y Moi、Neon Indianなどの代表的なアーティストの楽曲を研究する

これらのポイントを意識しながら、自分なりの解釈と創造性を加えることで、チルウェーブの要素を効果的に取り入れた楽曲制作が可能になります。ただし、ジャンルの特徴を踏まえつつも、独自性を失わないことが重要です。

チルウェーブの歴史

チルウェーブの歴史は比較的新しく、2000年代後半から2010年代初頭にかけて形成されました。以下にその歴史的な流れを説明します。

起源(2000年代後半)
2009年頃、音楽ブログやインターネットコミュニティを中心に「チルウェーブ」という用語が使われ始める
Hipster Runoff というブログの著者Carles が「チルウェーブ」という言葉を造語したとされている
初期の代表的アーティスト(2009-2010)
Washed Out、Neon Indian、Toro y Moiなどが先駆的な作品をリリース
これらのアーティストの音楽がチルウェーブの基本的な音楽性を確立
メディアの注目と普及(2010-2012)
Pitchfork などの音楽メディアがチルウェーブを取り上げ、ジャンルとしての認知度が高まる
「夏の音楽」「ノスタルジックな電子音楽」としてのイメージが定着
商業的成功と拡大(2011-2013)
Washed Out の “Feel It All Around” が人気テレビ番組 “Portlandia” のテーマ曲に使用され、さらなる注目を集める
メジャーレーベルがチルウェーブアーティストと契約を結び始める
影響力の拡大(2013-2015)
チルウェーブの要素が他のジャンル(インディーポップ、エレクトロニック)にも影響を与え始める
ヴェイパーウェーブなど、関連するサブジャンルが出現
変容と進化(2015以降)
初期のチルウェーブサウンドから進化し、より洗練されたプロダクションや実験的な要素を取り入れるアーティストが増加
ジャンルの境界が曖昧になり、他のスタイルとの融合が進む
レガシーと継続的な影響(現在)
チルウェーブの影響は現代の音楽シーンに広く見られ、そのエッセンスは様々なジャンルに取り入れられている
ノスタルジアと現代性を融合させたサウンドは、新しい世代のアーティストにも影響を与え続けている

チルウェーブは、デジタル時代のノスタルジアを音楽で表現するという独特のアプローチで、短期間で大きな影響力を持つジャンルとなりました。その歴史は、インターネットを介した音楽の共有と発見が音楽シーンに与える影響を示す好例となっています。

チルウェーブで有名なアーティスト

チルウェーブで有名なアーティストには以下のような名前が挙げられます。

Washed Out (Ernest Greene)
チルウェーブの代表的アーティスト
代表曲 “Feel It All Around” はテレビ番組 “Portlandia” のテーマ曲として使用され、広く知られるようになった
Toro y Moi (Chaz Bear)
多様な音楽性を持つが、初期の作品はチルウェーブの代表例として挙げられる
アルバム “Causers of This” (2010) が特に有名
Neon Indian (Alan Palomo)
サイケデリックな要素を取り入れたチルウェーブサウンドで知られる
“Polish Girl” や “Deadbeat Summer” などのヒット曲がある
Small Black
ニューヨーク出身のバンド
アルバム “New Chain” (2010) がチルウェーブの代表作の一つとされる
Memory Tapes (Dayve Hawk)
ドリームポップとチルウェーブの要素を融合させた音楽性で注目を集めた
“Bicycle” などの楽曲が有名
Tycho (Scott Hansen)
アンビエントとチルウェーブの要素を組み合わせた独自のサウンドで知られる
ビジュアルアーティストとしても活動している
Com Truise (Seth Haley)
80年代のシンセサウンドを現代的に解釈したスタイルで人気
“Galactic Melt” (2011) などのアルバムがチルウェーブの代表作とされる
Brothertiger (John Jagos)
DIYアプローチでチルウェーブサウンドを追求したアーティスト
“Out of Touch” などの楽曲が知られている

これらのアーティストは、チルウェーブの発展と普及に大きく貢献し、それぞれ独自のスタイルでジャンルを進化させてきました。多くの場合、チルウェーブは彼らのキャリアの出発点となり、その後より幅広い音楽性を探求するアーティストも少なくありません。

チルウェーブの名曲

チルウェーブの名曲として広く認知されている楽曲には以下のようなものがあります。

  • Washed Out – “Feel It All Around”
    チルウェーブの代表曲であり、テレビ番組 “Portlandia” のテーマ曲としても知られる.
  • Toro y Moi – “Blessa”
    アルバム “Causers of This” (2010) に収録されており、チルウェーブの初期の名作として評価されている.
  • Neon Indian – “Deadbeat Summer”
    アルバム “Psychic Chasms” (2009) に収録されており、サイケデリックな要素を持つチルウェーブの代表曲.
  • Small Black – “Despicable Dogs”
    デビューEPに収録されており、チルウェーブのサウンドを広めた楽曲の一つ.
  • Memory Tapes – “Bicycle”
    アルバム “Seek Magic” (2009) に収録されており、ドリームポップとチルウェーブの融合を示す楽曲.
  • Tycho – “A Walk”
    アルバム “Dive” (2011) に収録されており、アンビエントとチルウェーブの要素を融合させた名曲.
  • Com Truise – “Brokendate”
    アルバム “Galactic Melt” (2011) に収録されており、80年代のシンセサウンドを現代的に解釈した楽曲.
  • Brothertiger – “Lovers”
    アルバム “Golden Years” (2012) に収録されており、DIYアプローチで作られたチルウェーブの代表曲.

これらの楽曲は、チルウェーブの特徴であるノスタルジックで夢のようなサウンドを体現しており、ジャンルの代表作として多くのリスナーに愛されています。

チルウェーブからの派生ジャンル

チルウェーブから派生した、あるいは影響を受けて発展したジャンルがいくつか存在します。主な派生ジャンルは以下の通りです。

ヴェイパーウェーブ (Vaporwave)
チルウェーブの影響を強く受けた電子音楽ジャンル
80年代後半から90年代初頭のポップカルチャーやコーポレートカルチャーを独特の方法で再解釈
スローダウンしたサンプルや、レトロな視覚要素を特徴とする
シンスウェーブ (Synthwave)
80年代の音楽やポップカルチャーにインスパイアされた電子音楽ジャンル
チルウェーブのノスタルジックな要素を、よりエネルギッシュなサウンドで表現
ドリームポップ (Dream Pop)
チルウェーブと相互に影響し合ったジャンル
シューゲイザーの影響も受けており、エセリアルなボーカルと霞がかったギターサウンドが特徴
ビーチハウス (Beach House)
チルウェーブの「夏」や「海」のイメージを、より具体的な音楽スタイルとして発展させたサブジャンル
穏やかでリラックスした雰囲気を持つ
ローファイヒップホップ (Lo-fi Hip Hop)
チルウェーブのローファイな質感とリラックスした雰囲気を、ヒップホップのビートと融合させたジャンル
勉強や作業用BGMとして人気を集めている
グロウフィ (Glo-fi)
チルウェーブと非常に近い特徴を持つサブジャンル
より実験的で、ノイズや歪みを積極的に取り入れる傾向がある
ハイパーポップ (Hyperpop)
チルウェーブの要素を極端に誇張し、ポップミュージックの概念を再定義したジャンル
過剰なオートチューンや歪んだサウンドが特徴

これらのジャンルは、チルウェーブの特定の要素(ノスタルジア、ローファイな質感、電子音楽的アプローチなど)を独自の方法で発展させたり、他のジャンルと融合させたりすることで生まれました。多くの場合、これらのジャンルは明確な境界線を持たず、相互に影響し合いながら進化を続けています。

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