ダブ・テクノの特徴と歴史【音楽ジャンル辞典115】
今回は、ダブ・テクノについての音楽的特徴や歴史をわかりやすく解説します。
ダブテクノは、1990年代初頭に生まれたテクノの一ジャンルで、ダブレゲエの音楽的手法とテクノのミニマリズムを融合させた音楽スタイルです。
深いリバーブ、ディレイ、エコーエフェクトを多用し、ヒプノティックで空間的な音響を特徴とし、メランコリックで内省的な雰囲気を持つ音楽ジャンルです。
Basic ChannelやDeepchordなどのアーティストによって開拓され、エッジの効いたコード、埃っぽいテクスチャー、幽玄な雰囲気によって定義される、時代を超越した実験的な電子音楽として知られています。
ダブ・テクノの音楽的特徴
ダブテクノは、テクノのミニマリズムとダブ音楽の深い響きを融合させた独自の電子音楽ジャンルです。
主な音楽の特徴は以下の通りです。
サウンドの特徴
何気なくフィルター処理とディレイエフェクト
地を這うような重厚なベースライン
ミニマルに繰り返すノイズタムやハット
シューゲイザー的な不思議な浮遊感
エフェクトとテクニック
ブ、ディレイ、エコーリバーを多用
音の空間性を重視
ヒプノティックで催眠的な音響効果
音素材を部分的に使用する
音楽のアプローチ
テクノのミニマリズムを基本
深くて内省的な音の質感
クラブ空間の機能性を超えた音楽表現
ベーシック・チャンネルやディープコードなどのアーティストによって開拓されたジャンルで、独特の一時と反復性を持つ音楽スタイルです。
ダブ・テクノでよく使われている楽器
ダブテクノでよく使われている音色は以下のような特徴があります。
音色の特徴
深い霧があったリバーブ音
エコーとディレイエフェクトを多用した音色
空間的で宇宙的な広がりのある音響
マイナーコードを思いついた和音
具体的な音色要素
スタブ(シンセサイザーのリフやループ、パッド音)
クリックノイズやホワイトノイズ
テープ加工による独特のテクスチャー
低域と高域をカットした歪んだ音色
サウンドデザインのポイント
空間を重視した音作り
遅延効果による催眠的な音響
自然で内省的な音の質感
ダブテクノは、深い空間性と実験的な音色を特徴とする独特の電子音楽ジャンルです。
楽曲アレンジに取り入れるポイント
ダブテクノの要素を楽曲に取り入れる際のポイントは以下の通りです。
1. 空間系エフェクトの活用
リバーブやディレイを多用して、広がりのある空間的なサウンドを作り出します。特に、ディレイを重ねることで音に深みと立体感を与えます。
エコー効果を使い、音が「霧がかった」ような印象を持たせることが重要です。
2. 反復性とミニマリズム
シンプルで反復的なリズムやメロディを基盤にし、少しずつ変化を加えることで催眠的な雰囲気を作ります。
ミニマルテクノの要素を活かし、過剰な装飾を避けながらも奥行きのある音楽構造に仕上げます。
3. ダブコードの使用
持続的またはスタッカートの和音(ダブコード)を使用し、マイナーコードやトライアド構成でメランコリックかつ内省的な雰囲気を演出します。
和音にリバーブやディレイを加え、柔らかく揺れるような響きを作ります。
4. ノイズとテクスチャー
テープノイズやホワイトノイズなどの質感を取り入れ、音に有機的で温かみのある要素を加えます13。
ノイズやクリック音など細かいエフェクトで楽曲全体に動きを持たせます。
5. 低音域の重視
深くリッチなベースラインを構築し、楽曲全体の土台として機能させます。低音域は控えめながらも力強く、空間的なサウンドと調和するように設計します。
6. テンポとグルーヴ感
一般的には120 BPM前後の中低速テンポで、リラックスしたグルーヴ感を維持します。アンビエントやチルアウトとも融合しやすいテンポ設定が特徴です。
7. 自然や宇宙的なテーマ
ダブテクノ特有の「自然的」「宇宙的」な広がりを意識したサウンドデザインを行います。これにはシンセパッドやフィルタリングされたドローンサウンドが効果的です。
これらのポイントを意識することで、ダブテクノ特有の深遠でヒプノティックなサウンドが楽曲に反映されます。
ダブ・テクノの歴史
ダブテクノ(Dub Techno)は、1990年代初頭にドイツで誕生した音楽ジャンルで、レゲエ由来の「ダブ」技法とミニマルテクノを融合させたスタイルです。その歴史は以下のように展開しました。
起源と背景
ダブテクノのルーツは1960~70年代のジャマイカで発展した「ダブ」にあります。ダブは、ボーカルを抜いたレゲエのトラックにディレイやリバーブなどの空間系エフェクトを加えた音楽手法です。
1990年代初頭、ドイツ・ベルリンを拠点とする音楽プロデューサー、Mark ErnestusとMoritz von Oswaldが「BASIC CHANNEL」というレーベルを設立。このレーベルがダブテクノの基礎を築きました。
特徴と音楽的要素
ダブテクノは、ミニマルテクノの反復性と構造に、ダブ由来のリバーブやディレイを多用した空間的なサウンドを融合しています。
特徴的な「霧がかった」音響効果や、深みのある低音、シンプルなビートが強調されています。
BASIC CHANNELは、アナログ機材やテープエコーを駆使し、独自のノイズやテクスチャーを作り出しました。これがジャンル全体の美学に影響を与えました。
発展と主要レーベル
BASIC CHANNELから派生したサブレーベル「Chain Reaction」や「Rhythm & Sound」がダブテクノの普及に寄与しました。
1990年代後半には、アメリカ・デトロイトで活動するDeepchord(Rod Modell)がデトロイトテクノと融合させ、新たなスタイルを提示しました。
その他の代表的なレーベルには、デンマークのEchocordやイギリスのModern Loveなどがあります。
現在の状況と影響
ダブテクノは北欧やロシアなど寒冷地域で特に人気があり、アンビエントやチルアウトとも融合して発展しています。
現在ではSpotifyやBeatportなどで「Deep Tech」や「Deep Techno」としてもカテゴライズされることが増え、メインストリームにも影響を与えています。
ダブテクノは、ジャマイカ発祥のダブ技法とヨーロッパ発祥のミニマルテクノが融合して生まれたジャンルで、その独特な霧がかったサウンドと深い空間性によって、多くのフォロワーを生み出しながら現在も進化を続けています。
ダブ・テクノで有名なアーティストと名曲
ダブテクノで有名なアーティストと名曲について、以下にいくつか紹介します。
ベーシック チャンネル (マーク エルネストゥス & モーリッツ フォン オズワルド)
ダブテクノの先駆者として知られるデュオです。
代表曲: “Phylyps Trak II” (1993)深いベースラインと反復的なリズムが特徴的で、ジャンルの基礎をしっかりとした曲として評価されています。
DeepchordがEchospaceを発表
ロッド・モデルとスティーブン・ヒッチェルによるプロジェクト。
代表曲:「Sunset」空間的で大気的なサウンドスケープが特徴的で、ダブテクノの深遠さを体現しています。
アンディ・ストット
UKのModern Loveレーベルの看板アーティスト。
代表曲:「Made Your Point」重厚なベースと繊細なテクスチャーの対比が印象的です。
フラクシオン (コンスタンティノス・スブリス)
ギリシャ出身のプロデューサー。
代表曲: “Bipolar Defect” (2000) Chain Reactionレーベルからリリースされ、ダブテクノの歴史に残る名曲として知られています。
ロッドモデル
Echospaceの片割れとしても知られるアーティスト。
代表曲:「Kingston」デイトロ的なテクノの要素とダブの静かを融合させた楽曲です。
これらのアーティストと楽曲は、ダブテクノの発展に大きく貢献し、ジャンルの特徴である深いベースライン、空間的なサウンド、繰り返し的なリズムを巧みに表現しています。
ダブ・テクノからの派生ジャンル
ダブテクノの主な派生ジャンルとしては以下が挙げられます。
ディープテクノ
ダブテクノの影響を受け、より身近なサウンドを追求したジャンル。
アンビエントテクノ
ダブテクノの空間的な要素を強調し、よりアンビエント的なアプローチを取り入れたジャンル。
ミニマルテクノ
ダブテクノのミニマルな要素をさらに詰め込んだジャンル。
グリッチテクノ
ダブテクノの実験的な側面を発展させ、ノイズやグリッチサウンドを積極的に取り入れたジャンル。
これらの派生ジャンルは、ダブテクノの特徴である空間的なサウンド、繰り返し的なリズム、エフェクトなどの多用途の要素を継承しつつ、それぞれ独自の音楽性を発展させています。
互いに影響し合い、境界線が解消されている場合も多くあります。
〈参考記事〉
https://www.ableton.com/ja/blog/designing-dub-chords-in-ableton-live-with-el-chooppizza-hotline/
https://emastered.com/ja/blog/dub-music
https://housemusiclovers.net/minimal/
https://0-signal.com/2019/01/16/best-dubtechno-tracks/
https://note.com/yorosz/n/ncdcfddff7057
https://block.fm/news/dub_is
https://diskunion.net/clubt/ct/news/article/1/61663
https://sonicwire.com/product/A5811







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