ドラムンベースの特徴と歴史【音楽ジャンル辞典61】
今回は、ドラムンベースについての音楽的特徴や歴史をわかりやすく解説します。
ドラムンベースは、1990年代にイギリスで誕生した電子音楽のジャンルで、主に高速なビートと重低音のベースラインが目立つ高速でエネルギッシュなダンスミュージックであり、リズムとベースの強調が特徴的なジャンルです。
前回:ミクスチャー・ロックの特徴と歴史【音楽ジャンル辞典60】
ドラムンベースの音楽的特徴
ドラムンベース(Drum and Bass)は、1990年代初頭にイギリスで誕生した音楽ジャンルで、以下のような音楽的特徴があります。
リズムとテンポ
- 高速テンポ: ドラムンベースの楽曲は、通常BPM(ビート・パー・ミニット)が165〜185で、非常に速いテンポを持っています。
- ブレイクビーツ: 複雑なシンコペーションを用いたブレイクビーツが特徴で、これが疾走感を生み出しています。
ベースライン
- 重低音: ドラムンベースの基礎的な要素として、強調された重低音のベースラインがあります。これにより、クラブのダンスフロアでのインパクトが強まります。
- ベースの多様性: ベース音色には多様性があり、唸るようなベースやワブルベースなどが用いられ、ダイナミックなサウンドを形成しています。
サンプリングと音源
- サンプリング: レコードからサンプリングされたドラムブレイクや、リズムマシン、サンプリングCD、ソフトウェアなどを使用してクリアな音質のリズムを構築します。
- シンセサイザー: ベース音色はサンプリングやシンセサイザーで制作されることが多いですが、エレキベースやアコースティックベースを使用するアーティストもいます。
サブジャンルと影響
- 多様なサブジャンル: ドラムンベースには、ジャンプアップ、ブラジリアン、リキッドファンク、ダークステップ、ニューロファンクなど、多数のサブジャンルがあります。
- 他ジャンルとの融合: レゲエ、ラテン音楽、ジャズなど、他の音楽ジャンルとの融合も見られます。
このように、ドラムンベースは高速で複雑なリズムと重低音のベースラインを特徴とし、多様な音楽的要素を融合させたジャンルです。
ドラムンベースで使用される楽器
ドラムンベースで主に使用される楽器や音源は以下の通りです:
- ドラムマシン/サンプラー:
リズムセクションの中核を担います。ブレイクビーツの構築に使用され、キック、スネア、ハイハットなどの打楽器音を生成します。 - シンセサイザー:
重低音のベースラインを作り出すのに不可欠です。様々な音色のベース音を生成し、ドラムンベースの特徴的な重低音を実現します。 - サンプリングCD/ソフトウェア:
クリアな音質のドラムサウンドやその他の音響効果を提供します。 - コンピューター/DAW(Digital Audio Workstation):
楽曲の制作、編集、ミキシングに使用されます。 - エフェクト機器:
音の加工や変調に使用され、独特のサウンドデザインを可能にします。 - エレキベース/アコースティックベース:
一部のアーティストは生楽器のベースを使用して、独自のサウンドを作り出します。 - キーボード:
メロディやハーモニーの要素を追加する際に使用されます。 - ボーカルマイク:
ボーカルトラックを含む楽曲の場合に使用されます。
これらの楽器や機材を組み合わせることで、ドラムンベース特有の高速リズムと重低音を持つサウンドが作り出されます。多くの場合、電子機器やソフトウェアが中心となりますが、アーティストの創造性によっては生楽器も取り入れられることがあります。
楽曲アレンジに生かすコツ
ドラムンベースの歴史
ドラムンベース(Drum and Bass)は、1990年代初頭にイギリスで誕生した音楽ジャンルで、以下のような歴史的背景や発展の経緯があります。
起源と初期の発展
- ジャングルからの派生: ドラムンベースは、1990年代初頭にイギリスで生まれた「ジャングル」というジャンルから派生しました。ジャングルはレゲエとレイヴ・ミュージックの融合によって生まれ、レコードからサンプリングされたドラムブレイクを多用していました。
1990年代の全盛期
- UKクラブシーン: 1990年代後半にイギリスのクラブシーンで全盛期を迎え、多くのプロデューサーやDJが登場しました。特に、Roni Sizeの『New Forms』(1997年)が商業的に成功し、ドラムンベースの知名度を高めました。
2000年代以降の国際的な広がり
- 国際的な展開: 2000年代以降、ドラムンベースはブラジル、オーストラリア、ニュージーランド、ドイツ、オランダなどでも人気を博し、各国から有名なプロデューサーが登場しました。日本からもMakotoのような世界的プロデューサーが現れました。
現在のシーンと文化的影響
- ドラムンベースの日: 最近では、イギリスで4月17日を「ドラムンベースの日」として祝日にするためのキャンペーンが行われています。この日は、ドラムンベースの典型的なBPMである174にちなんで設定されています。
- サブジャンルの多様化: ドラムンベースは、ジャンプアップ、ブラジリアン、リキッドファンク、ダークステップ、ニューロファンクなど、多数のサブジャンルに細分化されています。
主なアーティスト
- 初期のプロデューサー: LTJ Bukem、The Invisible Man、DJ Hype、Goldie、Fabio、Grooveriderなどが初期の代表的なプロデューサーです。
- 現代のアーティスト: Sub Focus、Chase and Status、Baron、Twisted Individualなどが現代の代表的なアーティストです。
ドラムンベースは、その高速なリズムと重低音を特徴とし、今もなお進化を続ける音楽ジャンルです。
ドラムンベースの世界的トッププレイヤー
ドラムンベースで有名なアーティストには以下のような人物がいます:
これらのアーティストは、ドラムンベースの発展に大きく寄与し、ジャンルの多様性を広げる役割を果たしています。
ドラムンベースの名曲
ドラムンベースの名曲には、以下のような楽曲が挙げられます:
- “Temper Temper” – Goldie: ドラムンベースのアイコンであるゴールディーの名曲で、1998年にリリースされたアルバム『Saturnz Return』に収録されています。オアシスのノエル・ギャラガーをフィーチャーしたこの曲は、ロックとドラムンベースの融合を感じさせます。
- “In Love” – Chase & Status feat. Jenna G: イギリスのデュオ、チェイス&ステイタスによるこの曲は、ドラムンベースのアンセムとして知られ、様々なジャンルの影響を受けたミクスチャー精神が表れています。
- “Hold Your Colour” – Pendulum: オーストラリア出身のバンド、ペンデュラムの代表作で、ロックとエレクトロニカの要素を取り入れたパワフルな楽曲です。
- “Human Elements” – Makoto: ジャズやソウルの影響を受けた暖かみのあるドラムンベースで、リスニングにも適した楽曲です。
- “All Night” – John B: キャッチーでダンスしやすいトラックで、ドラムンベースの多様性を示す一曲です。
- “LK” – DJ Marky & XRS: ブラジルのDJマークとXRSによるこの楽曲は、リキッドファンクの要素を取り入れた美しいメロディが特徴です。
これらの楽曲は、ドラムンベースの魅力を体現しており、ジャンルの進化と多様性を示す重要な作品です。
ドラムンベースからの派生ジャンル
ドラムンベースには多くの派生ジャンルがあり、その多様性がこのジャンルの特徴の一つとなっています。主な派生ジャンルには以下のようなものがあります:
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リキッドファンク:メロディックで滑らかな音楽性を持ち、ジャズやソウルの要素を取り入れたサブジャンルです。
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ジャンプアップ:エネルギッシュでダンスフロア向けの、よりアグレッシブなサウンドが特徴です。
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ニューロファンク:テクニカルで実験的なサウンドデザインを特徴とし、未来的な雰囲気を持つサブジャンルです。
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ダークステップ:重厚で暗いアトモスフィアを持ち、より攻撃的なサウンドが特徴です。
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ブラジリアン(またはサンベース):ブラジルの音楽要素、特にサンバのリズムや雰囲気を取り入れたサブジャンルです。
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ドラムステップ:ドラムンベースとダブステップを融合させたサブジャンルで、両ジャンルの特徴を併せ持ちます。
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ドリルンベース:1990年代半ばから後半にかけて誕生し、さらに複雑化したリズムが特徴です。Squarepusherが始めたとされています。
これらのサブジャンルは、ドラムンベースの基本的な要素であるブレイクビーツとベースラインを保ちつつ、それぞれ独自のテイストや音楽的特徴を加えています。この多様性により、ドラムンベースは常に進化し、新しい音楽的可能性を探求し続けているジャンルだと言えます。







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