アンビエント・ミュージックの特徴と歴史【音楽ジャンル辞典57】
今回は、アンビエント・ミュージックについて音楽的特徴や歴史をわかりやすく解説していきます。
アンビエント・ミュージックは、環境や空間を音楽化することを目的としたジャンルです。しばしば静かで穏やかな雰囲気を持ち、リラックスした状態や瞑想、集中、または睡眠を促進するために使用されます。繊細な音色や環境音、反復的なパターン、そして長い音符やゆっくりとしたテンポなどが特徴です。アンビエント音楽は、リスナーを異なる意識状態に導き、感情やイメージを呼び起こすことがあります。
環境音楽(かんきょうおんがく、英: ambient music)、アンビエント・ミュージックは、伝統的な音楽の構成やリズムよりも音色や雰囲気を重視した音楽のジャンルである。正味の構成、ビート、構造化されたメロディを持たないこともある。受動的、能動的なリスニングを可能にする音のテクスチャーの層を使用し、穏やかさや瞑想の感覚を促す。
このジャンルは、「雰囲気」、「視覚的」、「控えめ」な品質を呼び起こすと言われている。自然のサウンドスケープが含まれることもあり、ピアノ、弦楽器、フルートなどのアコースティック楽器の音がシンセサイザーでエミュレートされることもある。
Wikipedia「環境音楽」より引用
アンビエント・ミュージックの音楽的特徴
環境音とテクスチャ
自然の音、都市の音、フィールドレコーディングなど、さまざまな環境音に使われます。これにより、音楽が特定の場所や雰囲気を描写することができます。
ドローン音
長い持続音(ドローン)が多用され、静かで瞑想的な雰囲気を醸し出します。
ミニマリズム
音の繰り返しやシンプルなメロディー、和音進行が特徴です。これにより、音楽を聴き手をリラックスさせたり、集中させたりすることができます。
スローテンポ
曲のテンポは通常非常に遅く、リラックスした雰囲気を保ちます。
電子音の使用
シンセサイザーやサンプラーなどの電子楽器がよく使用され、広がりのあるサウンドスケープを実現します。
リズムが少ない
明確なリズムがほとんど、非常にシンプル。
持続的なサウンドスケープ
曲が始まりから終わりまで一貫した音の風景を使用することが多く、劇的な変化や急な転換は少ないです。
アンビエント・ミュージックで使われている楽器
- アンビエントミュージックでよく使われている音色は以下の通りです。
- シンセパッド:広がりのあるシンセサイザーのパッドサウンドは、自由に溶け込むようなサウンドを提供します。
- フィールドレコーディング:自然の音や都市の環境音など、実際の音のサンプル。
- ドローン:持続的で安定した無線通信はよく使われます。
- 反響音:リバーブやディレイなどのエフェクトを多用して、音に深みと広がりを持たせます。
- 電子音:シンセサイザーによる電子音基盤となりますが、これらは驚くべき加工され、複雑なテクスチャーを形成します。
アンビエントミュージックは、リスナーを特定の精神状態や環境へ誘うために設計されており、リラックス、瞑想、集中などの用途で広く利用されています。その音楽の特徴と音色の選択は、聴き手に対して独自の聴覚体験を提供します。
アンビエント・ミュージックの歴史
アンビエントミュージックの歴史は、20世紀初頭から始まり、音楽技術の発展とともに進化してきました。
- 1900年代初頭
エリック・サティ (Erik Satie) :フランスの作曲家エリック・サティが、背景音楽としての「家具の音楽(musique d’ameublement)」を唱えます。これがアンビエントミュージックの原型とされます。 - 1960年代
ブライアン・イーノ (Brian Eno) :イーノはアンビエントミュージックのパイオニアであり、彼の1978年のアルバム「Ambient 1: Music for Airports」はジャンルを定義しました。イーノはアンビエントミュージックを「意識的に聴かれなくても存在し続ける音楽」と定義しています。 - 1970年代
クラウトロックとコスミッシェ・ムジーク:ドイツのクラウトロックやコスミッシェ・ムジーク(宇宙音楽)など、電子音楽と実験音楽の融合がアンビエントのひとつでした。特にクラフトワークやタンジェリン・ドリームなどのバンドがこの時期に活躍しました。 - 1980年代
ニューヨーク・アヴァンギャルドシーン:ニューヨークのアヴァンギャルドシーンで、アンビエントはさらに進化しました。スティーブ・ライヒやフィリップ・グラスなどのミニマリスト作曲家もアンビエントの影響を受けています。アンビエントハウスとアンビエントテクノ:1980年代後半には、アンビエントハウスやアンビエントテクノが登場し、ダンスミュージックの一部としてアンビエントが取り入れられました。The OrbやKLFなどがこのスタイルを代表します。 - 1990年代
アンビエントドラムンベース:ゴールドィーやLTJブックスなどのアーティストが、アンビエントの要素を取り入れたドラムンベースを制作し、ジャンルの多様性を広げました。アンビエント・ドローン:スタース・オブ・ザ・リッドなどのアーティストが、長い持続音(ドローン)を主体とするアンビエント・ドローンを発展させました。 - 2000年代以降
ポストロックとアンビエントの融合:シガー・ロスやモグワイなどのポストロックバンドがアンビエントの影響を受け、広がりのある音響を特徴とする楽曲を制作。エレクトロニカとアンビエントの融合:エレクトロニカとアンビエントの融合が進み、Aphex TwinやBoards of Canadaなどのアーティストがシーンをリードしました。 - 現代
多様化とジャンルの拡大:現代では、アンビエントはインターネットやストリーミングサービスを通じてさらに多様化しています。新しいアーティストやプロジェクトが登場し、リラックスや瞑想、ヨガなどの用途で広く利用されています。
アンビエントミュージックは、初期の実験音楽から現代の多様なスタイルまで、長い歴史を経て進化してきました。その音楽の特徴とリスナーへの影響は、今も多くのアーティストとリスナーに影響を与えています。
アンビエント・ミュージックで有名なアーティスト
アンビエントミュージックで有名な作曲家やアーティストは多くいますが、特に以下の人物たちがその発展と普及を遂げました。
これらのアーティストたちは、アンビエントミュージックの多様なスタイルと進化を象徴する存在です。それぞれの作品が、アンビエントの異なる側面を探求し、リスナーに独特の音響体験をもたらします。
アンビエント・ミュージックの名曲
アンビエントミュージックには多くの名曲がありますが、以下にその代表的なものを紹介します。
ブライアン・イーノ (Brian Eno)
「Music for Airports」(1978年) – アンビエントミュージックの代表作で、静かで繊細な音の重なりが特徴。
「Discreet Music」(1975) – イーノのアンビエントスタイルで有名な作品。
アップエクス・ツイン (Aphex Twin)
「Xtal」(「Selected Ambient Works 85-92」より、1992年) – メロディックでリズミカルなアンビエントテクノの名曲。
「Rhubarb」(「Selected Ambient Works Volume II」より、1994年) – 落ち着いた音響風景が広がる楽曲。
ボード・オブ・カナダ (Boards of Canada)
「Roygbiv」(『Music Has the Right to Children』、1998年より) – ノスタルジックなメロディーと独特な音響が特徴。
「Dayvan Cowboy」(2005年『The Campfire Headphase』より) – アンビエントとエレクトロニカが融合した楽曲。
シガー・ロス (Sigur Rós)
「Svefn-g-englar」(「Ágætis byrjun」より、1999年) – エモーショナルで広がりのあるサウンドスケープが魅力。
「Hoppípolla」(「Takk…」より、2005年) – 感動的なメロディーと壮大な音響が特徴の楽曲。
スターズ・オブ・ザ・リッド
「Even If You’re Never Awake」(『And Their Refinement of the Decline』より、2007年) – 瞑想的で深遠なサウンドスケープ。
ロバート・リッチ
「ソムニウム」(2001) – 世界最長のアンビエントアルバムの一つで、瞑想的な音の旅。
ザ・オーブ (The Orb)
「Little Fluffy Clouds」(1990) – サンプルを多用したダウンテンポのアンビエントハウス。
これらの楽曲は、アンビエントミュージックの豊かな多様性と深い感動を与えるものです。各アーティストが独自のスタイルで、リスナーに異なる音響体験をもたらします。
アンビエント・ミュージックの派生ジャンル
アンビエントミュージックは、その独特の音響と雰囲気によって、多くの音楽ジャンルに影響を与えてきました。以下はアンビエントミュージックから影響を受けた主なジャンルです。
アンビエントミュージックの柔軟性と広がりのある音響は、これら多くのジャンルに影響を与え、それぞれのジャンルに独自の色を加えています。







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